大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(ラ)428号 決定

よつて按ずるに、原裁判所は抗告人が素志により仏道に入り信言宗智山派管長大僧正御獄隆道に師事して僧籍に入つたことのみを理由としてその名を「保光」に変更することの許可審判を求めたものと解し、抗告人の右申立は戸籍法第百七条に謂う正当な事由には該当しないものと認めるとの理由で本件申立を却下する旨の審判をなしたものであることは記録上明かである。

然しながら、記録によれば、抗告人は原裁判所に対し昭和二十九年九月五日附の書面を提出しており、右書面には改名に関する動機並びに経緯と抗告人の所心とを披歴するとして、小池主喜衛の呼称は「こいけあきえ」であり、過去十数年来正しく呼ばれたことがなく、そのため実生活に種々の支障を来し非常に煩わしいから難解なものとして改名の決意をして申立をした旨の記載があり、従つて右書面は本件改名申立を維持するため原裁判所に提出した準備書面と解すべきであるから、本件申立についてはその名の難解であることをもその改名の理由として主張する趣旨であるといわなければならない。従つて原裁判所は、抗告人の名「主喜衛」の呼称が「あきえ」であり、従来他人において抗告人の名を呼ぶのに如何に困難を感じていたが、そのため実生活において抗告人のみならず周囲の者が如何なる不便、支障を来したかを調査した上、抗告人の名が「難解なもの」であるかどうかを判断すべきであつたにも拘らずこの点について審理判断をしなかつたのは違法であるといわなければならない。

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